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高齢化社会を生き抜く~元気で長生きするために~

講師紹介

村井 隆三 先生
医療法人社団おなか会 おなかクリニック院長

演題

「高齢化社会を生き抜く~元気で長生きするために~」

日時

平成28年11月15日(18:30~20:00)

会場

日本生命八王子ビル 研修室

2025年問題

高齢者とは65歳以上の方のことを言い、後期高齢者とは75歳以上の方のことです。
2025年問題という言葉をご存知でしょうか、9年後の2025年には「ベビーブーム世代」が後期高齢者となり、高齢者人口は3,500万人:人口比の約30%に達します。

現在年間約100万人の出生者は2050年には、56万人になり子供が減ります。高齢者の人口比は38.8%、高齢者(65歳以上)一人を生産者(20~64歳)一人が支える肩車状態なります。
現在年間約100万人の死亡者数は2030年には160万人とピークを迎えます。
高齢者自身がどのように生きるのかを決めなければならなくなります。

平均寿命・平均余命・健康寿命

平均寿命とは、今生まれた新生児が何歳まで生きるのかという推測なので、現在生きている我々にはあまり関係ありません。


平均余命は今生きている人が後何年生きるだろうという推測なので、こちらが重要です。


ここで問題なのは、健康寿命と平均寿命の差の年数:介護が必要な年月です。

現在、男性で約9年、女性で約12年もあるのです。
この健康寿命と平均寿命との差を少なくすることが、“元気で長生きする”ということに直結します。

歩けなくなる→介護が必要となる

実は、病気や認知症で介護が必要になるよりは、単に筋力が衰え歩けなくなることで介護が必要になることの方が多い(25%)のです。

これは日ごろの活動で防止できることで、健康寿命の伸長に役立ちます。
ロコモーティブ・シンドロームと言われる運動器の障害は、筋肉量を維持するための肉・魚・卵・大豆食品などが豊富な食事と、テレビ体操や、散歩・ウォーキングなどの運動で十分に防ぐことが出来ます。

指輪っかテスト

両手の親指と人差し指で輪を作り、脚のふくらはぎの一番太いところを輪で囲んで、両手の輪の方がふくらはぎよりも大きければ、筋肉量が足りずに将来寝たきりになる可能性が高い。
逆に、両手の輪では入りきれず指が離れてしまうようなら、筋肉量の心配は少ない。

「治す」から「支える」医療へ

残念ながら、人は永遠に生きることはできません。120年以上生きられるようにはできていないようです。
従来から、病気になってから治すという考えが一般的ですが、健康寿命を延ばすには、病気にならないようにする。病気を早く発見して治す、という行動が必要です。
現在の主要死因を見ると、脳溢血などは、低塩分の食事と血圧のコントロールで減ってきていて、
ガン(悪性新生物)が第一位になっています。ガンは、高齢になることによりおこる病気です。


感染症を除くと成人死亡の主要な要因は喫煙と高血圧です。これに注意することは重要です。
また死因第3位の肺炎は、「肺炎球菌ワクチン」(8000円)で予防ができます。

ガンで死亡者数が増加しているのは肺がんと大腸がんです。
肺がんは「肺ドック CT検査」で、大腸がんは大腸がん検診(検便)で発見することが出来ます。

米国では大腸がん検診と禁煙が進んでいて、大腸がんに罹る方が少なくなってきていますが、受信者の少ない日本では大腸がんは増加しています。

どの様に最期を迎える

さて、普段考えることを避けている話題に入ります。どの様に最期を迎えるのが良いでしょうか。

最後の迎え方として、「ピンピンコロリ」:高齢になっても元気で生活し、突然具合が悪くなり亡くなる・・・
ことが望ましいと言われています。確かに高齢者本人にとってはそれが望ましいのですが、周りの家族にとっては、元気でおられた父・母が突然亡くなる悲しみは大きいものです。
私は、緩やかに最期を迎える「がん」が、人生を仕舞いにする準備が本人・家族共に出来るので望ましいと考えています。

欧米に寝たきり老人はいない

日本では、衰えて、自分で食事がとれなくなると「食事の介護」、食事中にむせて肺に入ることで発症する誤嚥性肺炎を繰り返すと、鼻から管を胃に通して栄養剤を与える「経鼻食」、体の外から穴をあけて胃へ直接栄養剤を与える「胃瘻」を行うことが多いです。
更に、呼吸ができなくなると「人工呼吸器」を接続して、一分・一秒まで長く生かそうとする。
これは、多くの場合、高齢者のためを思って、家族の希望で行われています。
しかし、ご自身は、「経鼻食」「胃瘻」「人工呼吸器」を望んでいるのでしょうか?
実は、欧米では、本人の意思を尊重し、自分で食事を十分に摂らなくなっても、「食事の用意」は確実にしますが、「食事の介護」を行いません。だから「寝たきり老人」がいないのです。

八王子市では「緊急医療情報」の準備を呼びかけています。その中に、延命処置を望むか否かの意思を書くことが出来るようになっています。

リビングウェル

「あらゆる手段を使って生きたい」と思っている方の意思は尊重されるべきです。
しかし、「回復の見込みがないなら、安らかにその時を迎えたい」「平穏死」「自然死」を望んでいる方の意思もまた尊重されるべきです。自分の意思を元気なうちに記しておく。それが「リビングウェル」です。

私も、エンディングノートを準備しています。


参加者の声
6年前夫の死に際し延命を望んだことが、今後悔となっています。私は自然死を望み、意思をはっきり子供に伝えたい
健康の時は、病気のことはあまり考えない。定期的に考え見直すことが必要と感じた
リビングウェル・エンディングノートは必要と感じた

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