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誰も教えてくれなかった薬の話
~ご存知ですか?薬を知ることが、国民の義務になったこと~

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講師紹介

宮本 法子先生
東京薬科大学 薬学部 客員教授

日時

平成28年6月15日(18:30~20:00)

会場

日本生命八王子ビル 研修室

市民の方に「くすり」のお話をするようになった経緯

宮本先生と帝京大学薬学部の齋藤先生が小学生中学年向けの医薬品の使い方についての絵本を出され、小学校などに配置されました。

これが、高齢者の方の目に留まり、「自分達は薬の使い方を何も教育されていない・・・」という話になり、一般の方のために医薬品の使い方についてのお話をするようになりました。

薬のこれらのことをご存知ですか

  • 薬には自由勝手に使うモノではなく使い方がある。
  • 中学生は2012年から保健体育の授業で医薬品についての教育を受けている。
  • 法律で国民は薬を適正に使うように求められている。

「薬事法」が改正されました

実は、平成26年11月「薬事法」の一部が改正され、法律の名前も「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律:医薬品医療機器等法」と変わったが、その中で、
第1条の6:国民は、医薬品等を適正に使用するとともに、これらの有効性及び安全性に関する知識と理解を深めるよう努めなければならない。
と、健康保険費用の増加を抑えるために、軽い病気の時は、医療や処方薬に頼らず、国民が自分の判断で、一般医薬品を購入して、病気を治す。そのために国民は医薬品についての知識・理解を深める努力義務がある。と改正されました。

薬を良く知りましょう:薬の体内動態

  • 薬の体内での動き
    • 多くの薬は、飲むと食道・胃を通り十二指腸や小腸で溶けて、いったん肝臓へ運ばれ、血液の中に溶け、血液の循環に乗って、全身に運ばれ、薬ごとに計画された血中濃度で効果が出る。
    • 食道などに薬が留まらないように、多めの水かぬるま湯で飲む
    • 効き始める血中濃度になるのに15分~30分ぐらいかかる。
    • 薬の成分は計画された血液濃度が続いている時間、医薬品としての効果がある
    • 薬の成分は血流にのって肝臓に運ばれ、徐々に分解され、血中濃度は徐々に下がり医薬品としての効果を発揮しなくなる。
    • 分解された薬の成分は最終的に尿や便として排出される
    • 医薬品はそのように設計されている。
  • 薬の血中濃度と用法・用量の関係

  • 薬の血中濃度 薬を飲む時間と量(1日3回飲む薬の場合)

  • 薬を飲み忘れても、2回分飲むのは危険・昼飲み忘れても夜は1回分服用する

  • 薬を飲むタイミング:薬は理想的な血中濃度:薬毎にちょうどよい効き方になるように飲むタイミングが決められている。特に、食事によって血中濃度が変わる薬や、食事に影響を与える薬などあるので、食事と薬を飲むタイミングが決められていることが多い。
    •  起床時:朝起きたら寝床の中で飲む
    •  食前:食事の約30分ほど前に飲む
    •  食直前:食事をとる直前:薬を飲んですぐ食事をする
    •  食直後:食事が終わったらすぐ飲む
    •  食後:食事した後30分以内に飲む
    •  食間:食事と食事の間:食後2時間後ぐらいに飲む
    •  頓用:食事とは関係なく、熱・痛みなど症状が出たら飲む

注意したい薬の飲み合わせ(相互作用)

  • 薬の飲み合わせとは、複数の薬を用いることにより、薬の効果が出なくなったり、効果が強く出すぎてしまったりすること。薬と薬だけではなく、薬と食品、薬とお酒、薬とタバコなどにも注意する必要がある。薬の使い方に飲み合わせについての記載があるので、よく読んで使う。
  • 血中濃度の推移と薬物動態学的相互作用の解釈


飲んでる薬の作用や副作用を強めてしまう例

飲んでいる薬 食物・嗜好品 起こることがある症状
高血圧、狭心症の薬
(カルシウム拮抗薬 
グレープフルーツジュース 血圧の下がり過ぎ
心臓の働きの低下
ぜんそく薬、咳止め、かぜ薬
(テオフィリンを含むもの)

紅茶、緑茶、ウーロン茶、コーヒー(カフェインを含むもの)
副作用が強まる
(頭痛、不眠、イライラなど) 
 
鼻炎薬
(塩酸フェニルプロパノールアミンを含むもの)

チーズ、ワイン、バナナ、そら豆(チラミンを含むもの)
頭痛、胸苦しさ、血圧上昇など
血栓症薬血液を固まりにくくする薬(ワルファリン)糖尿病薬 (トルブタミド)催眠鎮静薬 (バルビタール、トリアゾラム)
酒(アルコール
)<飲酒中、飲酒後>
※長期の大量飲酒者の場合は逆に、薬の作用が弱まることがある
出血傾向
低血糖(だるさ、ふるえ、意識消失)
呼吸抑制、意識もうろう、血圧低下



飲んでる薬の作用を弱めてしまう例

飲んでいる薬 食物・嗜好品 起こることがある症状
血栓症薬
血液を固まりにくくする薬 (ワルファリン)
なっとう、クロレラ、ブロッコリーなどの緑黄色野菜(ビタミンKを含むもの) 血液が固まりやすくなる
抗生物質 (テトラサイクリン系
牛乳、ヨーグルトなどの乳製品(カルシウム、マグネシウムなどを含むもの)
一緒に摂ると薬が吸収されにくくなり、効果が弱くなる2時間ぐらいずらして飲むとよい 
鼻炎薬
(塩酸フェニルプロパノールアミンを含むもの)

チーズ、ワイン、バナナ、そら豆(チラミンを含むもの)
頭痛、胸苦しさ、血圧上昇など
胃腸薬 (H2受容体拮抗剤・シメチジン)ぜんそく薬、咳止め、かぜ薬 (テオフィリンを含むもの)心臓・血圧の薬 (β-遮断薬)
喫煙(タバコ)
薬の効き目を弱める※喫煙習慣のある人が勝手にタバコをやめると薬が効きすぎることがある禁煙するときは医師に告げる 

薬を正しく使うためのルール

  • 主作用と副作用:薬を使っているときに、いつもと違う症状が出た場合:薬の副作用が出ている可能性が有ります。直ちに薬の使用を中止して、医師や薬剤師に相談しましょう。
    • 薬の使い方を自分なりに変えない:錠剤をかみ砕いて飲んだりしない、カプセルを外して飲んだりしない
    • 錠剤やカプセルには主に薬の血中濃度を調整するために様々な工夫がされています。
    • 錠剤を砕いて飲む・カプセルを外して飲むと、薬の血中濃度が急激に上がって、思わぬ副作用が出ることがあります。
    • 薬が飲みにくい場合は、薬剤師に相談してください。
  • 目薬の差しかた
    • 目薬を差す前は手を洗う:手の雑菌を目や目薬に触れさせない
    • 目薬は1回に一滴点眼する:多く点眼しても目からあふれてしまう。
    • 目薬を差した後、目をぱちぱちしない:目からあふれた目薬は軽くティッシュで押さえてとる。
    • 目薬は容器の先端がまつ毛・まぶた・眼球に触れないように離してさす:雑菌が目薬や目に入り、繁殖することがある。
    • 2種類以上の目薬を差す場合は、5分以上間隔をあけてさす:目薬があふれて効かない。
  • 自分の薬を他人に使わせない・他人の薬を自分で使わない:処方薬はその人の病気に合わせて、処方されています。同じような症状でも違う病気で起きていることがあるので、薬の使いまわしは絶対にしない。また貼り薬でも、消炎鎮痛薬だけではなく。心臓の薬・血圧の薬・呼吸器の薬など様々な薬が使用されています。消炎鎮痛剤だと思って他人が使うと危険なことがあります。
  • ついうっかりPTP包装のまま薬を飲むに人が多い:錠剤やカプセルの多くは、プラスチックでシート状に包装されています:PTP包装。それを一つずつ切り離して、一回分として保管していた場合、ついうっかりシートのまま飲込み食道を傷つける事故が多発しています。
    • 出がけに急いでいた時に薬を飲んだ
    • テレビを見ながら薬を飲んだ
    • おしゃべりしながら薬を飲んだ
    • 暗いところで薬を飲んだ
    • 等の原因で、うっかりシートのまま飲む事故が発生しています。薬は落ち着いて飲みましょう
  • 子供が誤って大人の薬を飲む:子供の誤飲を防ぐのは大人:子供の誤飲事故で一番多いのは、家族に処方された薬を飲む、誤飲事故です。大人が使う用量の薬を体重が少ない幼児が飲み、毒性発現濃度に達して死亡事故になることもあります。一番多いのが1・2歳の幼児です。テーブルの上・台所・棚・床などに置かれていた薬を飲む事故が発生しています。幼児の誤飲事故を防ぐのは大人の責任です。医薬品は薬箱へ入れ、幼児の手が届かない場所に保管しましょう。

参加者の声
薬の飲み合わせ・お薬手帳の意味が良く分かった。
薬を砕いて飲んでいたので、それが危険なことがあると知り、驚いた。
子供の誤飲に気を付けなければならないと意識ができた。

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